安定志向か成長志向かで迷うことの勘違い

キャリア論

20代中盤から30代中盤にあたり、寄せられるキャリア相談の中で1,2を争って多いのが、

「安定しているけどつまらない現職と、将来は不確かだけどすごく面白そうでやりがいを感じそうな仕事。どちらを選ぶか迷っています」

という種類のご相談です。

また、不思議なもので、

安定している今 → 成長できそうな違う仕事 で迷う

という図式はよく見るのですが、

成長できそうな今の仕事 → 安定できそうな違う仕事 で迷う

という図式は見たことがありません。

本記事では、そのあたりの理由とあわせて、よくあるこのお悩みに潜む勘違いについて、深堀してみたいと思います。

「その迷い、本当に正しい比較軸ですか?」

なぜ私たちは「安定」か「成長」かを選ぼうとしてしまうのか

そもそも、なぜ多くのキャリアのお悩みにおいて、

「安定を捨てて、不安定だけど成長できそうな環境に行くか迷う」

という現象が起きるのでしょうか。

いくつか考察してみます。

説1:人間、安定できる環境にいく時に迷うことは無いから

明確なデータがあるわけではないですが、通常、人が迷う時というのは、安定している環境を抜け出そうという時だと思います。

先の読めない不安定な未来に飛び込もうとするから迷うのであって、安定した世界にいける時に不安を覚える方は多くないはずです。

これまで1,000名以上のキャリア相談をお受けしてきましたが、安定させたいという方はいても、

「いま不安定な環境にいるんですけど、安定した環境に行くか迷ってます…」

と言われる方に出会ったことはまだありません。

説2:分かりやすいから

「安定」と「成長」という二項対立(のように見える)は、図式として非常に分かりやすいです。

大手企業 = 安定
ベンチャー = 成長(不安定)

という単純化された情報に触れる機会は多いですし、ドラマや漫画で人々を魅了するストーリーも、基本的には「安定を捨てて、不安定だけど成長できる環境へ飛びこむ!」というものです。

キャリア相談と同じく、

「成長できるけどどうなるか分からない環境が嫌なので、安定した世界に移ります」という主人公に出会ったことはまだありません。

不確実な未来への不安から、分かりやすい分類に当てはめて安心したいという心理が働いているのではないでしょうか。

説3:「成長しなければ」という焦りが刷り込まれているから

現代社会、とくに若年層向けのキャリア観には

「成長して当たり前」
「挑戦しないと取り残される」

といった半ば強迫的な成長圧力がある気がします。

・自己啓発本やSNSの投稿
・ベンチャー企業の採用コピー
・キャリア系のメディア記事

こうした影響により、本当は「今のままでもちょうど良い」はずが、

「このままではダメかもしれない…」
「成長しない自分は劣っているかも」

と不安に駆られ、「安定 vs 成長」で迷うという構図をつくってしまうのかもしれません。

ちなみに、今いる会社もよく考えればぜんぜん「安定」ではなかったりすることもあります。

「安定」vs「成長」に潜む勘違い

では、実際にこのテーマの裏にありがちな、よくある勘違いかもしれないことをみていきたいと思います。

勘違い①:安定と成長は対立するものだと思っている

分かりやすいがゆえに、安定と成長は対立するものだと、無意識に思い込んでしまっているケースがあります。

安定と成長は本当にトレードオフなのか

まず考えるべきは、

「安定を選んだら成長を捨て、成長を選んだら安定を捨てなければならない」

という状況が本当かどうかということです。

安定と成長は両立するケースがある

実際に周りを見てみると該当する人がいらっしゃる方も多いかと思いますが、

成長を重ねた結果、安定を得ている人

もいれば、

安定した環境の中で着実に成長している人

もいます。

今の会社でもまだ成長できる要素や、実際に成長している人はいないでしょうか?

そういった点も見てみると、また視点が変わってくるかもしれません。

「どちらか」ではなくて「どうバランスするか」

安定か成長かという、極端なゼロか100ではなく、どの程度安定を取ってどの程度成長を取るか、そのバランスを考えるということが重要です。

勘違い2:時間軸の概念がない

この安定vs成長問題に限らず、多くのキャリアのお悩みに共通することですが、よくある見落としとして、そのお悩みに時間軸が含まれていないことがあります。

本来、多くの要素は時間経過で変わるもの

キャリアを考える時に、その多くの要素は時間経過で変化していくものです。

例えば、「安定」という要素。

山一証券、北海道拓殖銀行、ダイエー、JAL…

各企業の最盛期に入社した方達の多くはきっと、「これで将来安泰だ」と思ったのではないでしょうか。

最近でいうと、パナソニックが国内外1万人のリストラを発表しました。

この世に未来永劫変わらないことはそうそうありません。

その瞬間だけを切り取る弊害

しかし、多くのケースで、今その瞬間だけの、当人からみた状況をもとに考えてしまいます。

早晩変わりゆくかもしれない要素を、今時点のみの状況で判断してしまうと、「思っていた未来とぜんぜん違う…」ということになりかねません。

今の状況があと数年、数十年したらどうなるか、

まで考えてみると、また見えてくる判断軸が変わってくるかと思います。

勘違い3:「選択ミス=キャリアの失敗」だと思っている

安定vs成長の悩みの背景には、

「選択ミスをしたくない。ここで選択をミスったらキャリアが失敗してしまう…」

というある種、強迫観念のようなものを感じる時があります。

ただ、長年キャリア支援に携わってきて言える数少ない絶対のことは、

「キャリアの選択に成功も失敗も正解も不正解もない」

ということです。

よくある「選んだ道を正解にする」話

誤解を恐れずにいうと、選択すること自体にはあまり大きな意味はありません。

よく聞く話だと思いますが、「選んだ道を正解にする」という発想が、キャリア構築においては非常に重要です。

なにを選んでも、大切なのは、そのあと何をするかです。

ただ、迷っていることには意味がある

選択に意味はないと言いましたが、そこに至るまでの迷いには意味があると思います。

あなたが生きていく上で大事にしていることを見つめなおす非常に良い機会になるからです。

それが見えていれば、どんな選択をしてもある程度納得ができ、その後のキャリア構築で大きな力になります。

正しい比較軸:本当は何に迷っているのか

ここまで安定vs成長の考え方になりがちな理由、そしてそこに潜みがちな勘違いをみてきました。

では、結局どうすればいいのでしょうか?

結論としては、

正しい比較軸を持つ

ということだと思います。

安定か成長かの裏にあるもの

あなたが考える「安定」を構成する要素と、「成長(不安定)」を構成する要素を、分解して考えてみましょう。

収入の不安、仕事のやりがい、職場の人間関係、家族との時間…

などなど、複数の構成要素が出てくるかと思います。

そして、時間経過にあわせてそれが変わる可能性も考えてみます。

その中で、本当に大事にしていること、比較すべき軸はなにかを深堀してみると、必ずしも安定と成長の二者択一ではないことがみえてくるかもしれません。

まとめ

ここまで見てきたように、「安定か成長か」という問いの立て方には、思いがけない前提の誤りや見落としがあるかもしれません。

迷っているときほど、自分にとっての「安定とは何か」「成長とは何か」と、それぞれを構成する要素を分解して言語化することが大切です。

キャリアに正解なんてなく、選択はいつでも修正可能です。

一歩ずつ、散歩道を楽しむようにキャリアを歩いていきましょう。

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