退職を繰り返す自分を責めてしまうときの考え方

「また仕事を辞めてしまった…」

そんな言葉が頭の中で何度も繰り返され、胸の奥が重くなることはありませんか。

まるで自分が社会人として失格になったような感覚。

履歴書の職歴を見返すたびに、「次の面接でどう説明しよう」と膨らむ不安。友人のSNSには昇進報告や「〇年勤続」の投稿が並び、つい自分と比べてしまう。

日本社会では「長く勤めること」が良しとされ、「石の上にも三年」という言葉は学校でも職場でも当たり前のように使われます。

そんな中で退職を繰り返すと、「自分は我慢が足りないのでは」「社会人失格ではないか」と思いやすくなります。

でも本当に、退職を繰り返すことはマイナスでしかないのでしょうか。

今回は、「自分を責める視点」から「意味を見つける視点」へと切り替えるための考え方をお伝えします。

なぜ自分を責めてしまうのか

退職を繰り返す人が自己否定に陥りやすいのは、主に次の3つの背景があります。

背景1：社会的・文化的な固定観念

「我慢こそ美徳」「途中で辞めるのは根性がない」という価値観が根強く残っています。

特に年上世代や一部の採用担当者の中には、退職回数を「忍耐力の不足」と短絡的に判断する人もいます。

背景2：周囲の反応や評価への不安

履歴書に短期離職が並ぶと、「面接で嫌な顔をされるのでは」と想像してしまいます。

この不安は面接だけでなく、親や友人からの「また辞めたの？」という一言でも刺激されます。

その不安が、自分を責める材料になってしまうこともあります。

背景3：他人との比較

同世代の友人が同じ会社で長く働き、昇進や安定を手に入れていると、自分の選択が間違っていたように感じやすくなります。

退職を繰り返すことの「事実」と「解釈」を分ける

まず大事なのは、「事実」と「解釈」を分けて考えることです。

事実：退職回数が多い（履歴上の出来事）
解釈：「自分はダメだ」という否定的な評価

事実は変えられませんが、解釈は変えられます。

同じ出来事でも、「自分は根気がない」という解釈もあれば、「自分は環境に合わせて柔軟に動ける」という解釈もあります。

たとえば、2年ごとに職場を変えた人は、「落ち着きがない人」とも「新しいチャレンジを恐れない人」とも捉えられます。

大切なのは、自分がどちらのストーリーを選ぶかです。

退職経験から得られるポジティブな要素

退職は一般的に「マイナスの出来事」と見られがちですが、視点を変えれば多くの価値が隠れています。

これらは一見見えにくいですが、キャリアの強みとして十分にアピールできる要素です。

適性や価値観が明確になる

希望の職場ではなかったかもしれませんが、「この環境は合わない」という経験ができたことは、次にどんな条件を重視するべきか、自分に合う条件を知るヒントになります。

たとえば、残業の多さに疲弊した人は「ワークライフバランス」を大事にするようになり、人間関係で悩んだ人は「心理的安全性のある環境」を重視できるようになります。

変化や新しい環境への適応力

新しい職場でゼロから人間関係を築く力や、仕事を覚えるスピードは自然と鍛えられる場合があります。

短期離職を繰り返す中で培われた「初動力」は、プロジェクトベースの仕事や急成長企業で特に重宝されます。

幅広い業界・職種の知識

複数の業界や文化を体験していることで、他分野との橋渡しができる人材になれます。

また、課題に直面した時に、「他の会社や職種だとこうしていたな」という情報・ノウハウは、時に大きな武器になります。

複数の会社や業界・職種を知っていることで、異なる知識を組み合わせて新しい提案も可能です。

多様な人間関係の構築力

環境が変われば、また新たな人々と関わることになります。上司や同僚、取引先など、さまざまなタイプの人との接し方を学ぶ機会が増えます。

結果として、初対面の人と打ち解けるスピードが速くなり、社内外の調整役として活躍できるケースもあります。

自分を責めるモードから抜けるための思考法

「なぜ辞めたか」より「辞めて得たもの」に注目する

辞めたことで自分を責めてしまう時は、「なぜ辞めてしまったのか」と考えてしまいがちです。

しかし、辞めたことを悔いるのではなく、辞めたからこそ得られたものに目を向けてみましょう。

例：「仕事内容が合わなかった」→「自分は〇〇の業務にやりがいを感じると分かった」

第三者目線で経歴を語ってみる

自分を責める時は、感情が強く入り込みすぎている場合が多いです。

友人に話すように、感情を抜いて事実だけを説明する練習をすると、客観的な視点を持て、冷静に見られるようになります。

パターンを見つけたら改善課題に変える

たとえば「仕事内容のミスマッチが多い」なら、事前の職場リサーチを徹底する、というように未来に活かします。

小さな成功体験を積み重ねる

ボランティアや短期プロジェクトでも「やりきった」経験は自己肯定感の回復に役立ちます。

次のキャリアにつなげるアクション例

キャリアの棚卸しをする

退職理由ではなく、そこで得たスキルや知識、達成した成果を書き出します。

たとえば「事務職→接客業→営業職」と移った場合、それぞれで身につけたスキル（正確な事務処理、顧客対応、商談力など）を整理します。

求人選びの軸を明確にする

「避けたい条件」と「必須条件」をあらかじめ整理し、求人票や企業HPと照らし合わせ、同じミスマッチを繰り返さないようにします。

このプロセスを省くと、同じ理由での離職を繰り返すリスクが高まります。

面接での前向きな説明を用意する

たとえば「短期間でしたが、新しい業務領域を学びました。その経験を土台に、次は長期的に成果を出したい」という形で話せば、印象は大きく変わります。

職務経歴書の工夫

プロジェクト単位や業務内容ごとにまとめることで、短期離職の印象を薄めることができます。

特にIT系やクリエイティブ職では、このまとめ方が効果的です。

まとめ

退職回数は、あなたの価値の全てではありません。

大切なのは「そこから何を学び、どう次に活かすか」です。

キャリアは一本道ではなく、散歩道のように曲がりくねり、寄り道もあれば立ち止まることもあります。

その一歩一歩が、あなただけの風景をつくっていきます。
過去を責める時間を、未来を描く時間に変えていきましょう。

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