「転職したいけど怖い」心理を整理する5つの質問

「もう今の職場はつらい」「でも転職するのは怖い」。

そんな気持ちを抱えている人は、とても多いものです。

頭では「行動した方がいい」と分かっていても、なかなか動けない。

気づけば数ヶ月が過ぎてしまった。そんな経験をした方もいるのではないでしょうか。

「転職が怖い」という感情には、いくつもの側面があります。

収入が下がるかもしれない不安、新しい職場でうまくやっていけるかという自信のなさ、今の会社を辞めることへの罪悪感。

どれも人間として自然な感情です。大切なのは、「怖さ」を否定することではなく、その正体を理解してあげることです。

私たちはなぜ、現状維持を選びがちなのでしょうか。

脳は、「変化」を「リスク」と捉えるようにできています。

転職活動という未経験の領域へ踏み出すことは、基本的には安定を求める私たちの本能からすると、ある種の脅威なのです。

また、心理学には「現状維持バイアス」という考え方があります。

これは、得られる利益よりも、失うこと（損失）を過大評価してしまう傾向のことです。

「もし失敗したら」と考えるとき、私たちは利益の可能性よりも、失敗の恐怖に強く引っ張られてしまうのです。

しかし、この「怖さ」は、あなたが自分の人生やキャリアを真剣に考えている証拠でもあります。

今回は、5つの質問を通して「転職したいけど怖い」という気持ちを整理し、少しずつ前へ進むためのヒントを考えていきましょう。

質問①：「何が“怖い”と感じているのか？」

まず、自分が何に対して怖さを感じているのかを、できるだけ具体的に言葉にしてみましょう。

「転職して収入が下がるのが怖い」
「人間関係がまた一からになるのが怖い」
「今よりも大変な仕事だったらどうしよう」
「次の職場でもうまくいかないかもしれない」

多くの場合、「怖い」という感情は“漠然とした不安”として心に居座ります。

けれど、紙に書き出してみると、「あ、自分はこういうことを心配していたのか」と整理され、少し距離を取れるようになります。

さらに、紙に書き出した不安を、「事実」と「感情」に分けてみましょう。

たとえば、「給料が下がるのが怖い（感情）」の裏にあるのは、「自分の市場価値を知らない（事実）」かもしれません。

不安の具体的な根拠を突き止めることで、感情論から抜け出し、対策の立てやすい「課題」へと変えることができます。

・「収入が不安」なら、転職市場の相場を調べる。
・「人間関係が不安」なら、自分に合う職場文化を見極める方法を学ぶ。

怖さを“可視化”できれば、それは行動に変わる第一歩になります。

質問②：「今の職場に“留まる理由”は何か？

次に考えたいのは、「今、会社に残っている理由」です。

「居心地がいいから」「慣れているから」「辞めるのが面倒だから」。

どんな理由であっても、それが自分の意志で選んでいるなら問題ありません。

ただし、「怖いから動けない」という理由で留まっているとしたら、それは“納得して選んでいる安定”ではなく、“惰性の安定”になっているかもしれません。

職場にとどまる選択も、転職する選択も、どちらも正解です。

大事なのは、「自分で選んだ」と思えるかどうか。

「怖いから仕方なく残っている」ではなく、「今はこの環境で経験を積むと決めた」と言える状態が理想です。

もし、留まる理由が“怖さ”だけなら、一度その気持ちをほどいてみる価値があります。

質問③：「転職で“得たいもの”は何か？」

次に、「転職で何を得たいのか」を考えてみましょう。

「嫌な職場を抜け出したい」という思いが強いと、転職活動は“逃げ”のように見えてしまうかもしれません。

しかし本質的には、「今より良い働き方を選び直す」行為です。

あなたが望むのはどんな環境でしょうか。

「人間関係の良い職場」か、「自分の強みを活かせる仕事」か、「プライベートを大切にできる働き方」か。

理想を言葉にすると、転職活動の軸が明確になります。

「怖い」という気持ちは、“方向が見えていない”ときに強まるもの。

逆に「何を得たいか」が明確になれば、行動への怖さはぐっと軽くなるのです。

質問④：「最悪のケースを想像すると、どうなる？」

「転職したいけど、もし失敗したらどうしよう……」

多くの人が抱えるこの不安。

けれど実際に“最悪のケース”を具体的に想像してみると、「思ったより致命的ではない」と気づくことが多いものです。

たとえば、「転職して合わなかったらどうしよう」と思うなら、再転職という選択もあります。

「仕事が見つからなかったら」と感じるなら、失業給付やキャリア相談などの制度的支援もあります。

多くの人は、失敗を想像する時に「終わり」をイメージしてしまいますが、実際はやり直しのチャンスがいくらでもあるのです。

「怖い」と感じたら、「その後、どうなる？」と一歩先まで想像してみてください。

現実的に考えることで、恐怖が現実的な“課題”に変わります。

質問⑤：「もし“怖さ”がなかったら、どうしたい？」

最後の質問は、少し逆の視点です。

もし“怖い”という感情がなかったら、あなたはどうしたいですか？

この問いは、あなたの「本音」を浮かび上がらせます。

「本当はもう辞めたい」
「もう少し頑張りたい」
「違う環境で自分を試したい」

どんな答えも、今のあなたの等身大の気持ちです。

怖さの裏には、必ず「やってみたい」「変わりたい」という願いがあります。

怖くても、その気持ちがあるなら、それは“本気のサイン”です。

いきなり転職活動を始めなくても、まずは求人サイトを見てみる、キャリア相談を受けてみる、信頼できる人に話してみる。

そんな小さな一歩から始めてもいいのです。

まとめ：「怖さ」は悪ではなく、次へのサイン

「転職が怖い」という感情は、あなたが自分の人生やキャリアを真剣に考えている証拠です。

怖いときこそ、自分を責めず、気持ちを整理する時間を大切にしてみてください。

感情を整理すれば、選択はより明確になります。

最後に、一つだけ注意しておきたいことがあります。それは、「何もしない」こともリスクになる可能性があるということです。

私たちは、今まで費やした時間や労力を惜しんでしまい、不本意ながら今の職場に留まり続ける「サンクコスト（埋没費用）の誤謬」に陥りがちです。

しかし、本当に恐れるべきは、「現状維持」という名の「時間」を失い続けることかもしれません。

怖さを乗り越えるのではなく、怖さを理解して前へ進む。そんな柔らかい歩み方で構いません。

いきなり転職活動を始めなくても、まずは小さな一歩から始めてみましょう。

例えば、

・転職体験記を読む
成功例だけでなく、失敗談も読み、「失敗してもやり直せる」という現実を知る。

・求人サイトで年収の相場を見る
自分の市場価値を客観的なデータで知り、不安を具体性のある情報に置き換える。

・キャリア相談のプロに話す
誰かに「怖い」という気持ちと、5つの質問への答えを聞いてもらうだけで、心は劇的に軽くなることがあります。

あなたの中にある「変わりたい」という本気のサインに目を向け、あなたのペースで進んでみましょう。

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