人事担当が“辞退防止”のために面接で言うべき一言とは?

採用

「最終まで来てくれたのに、辞退された」

採用担当者なら誰もが一度は経験する瞬間です。

せっかく良い候補者に出会えたのに、内定前に辞退されてしまう。

その原因を「他社に決まった」「条件が合わなかった」と片づけてしまうのは簡単ですが、実際には、面接で感じた“印象”や“感情”が引き金になっている可能性もあります。

エン株式会社が2023年に実施した『エン転職』ユーザー8,622名を対象とした調査によると、

「選考を辞退したことがある」と回答した人は全体の61%

辞退が発生するタイミングも、「面接前」46%、「面接後」45%と、選考が進んだ段階でも多く発生していることがわかります。

もちろん、他社状況や条件面による辞退は、面接前だけではなく面接後でも同様に発生しているケースもありますが、それだけではなく、面接の場で起こる“心の変化”が辞退に関係している場合も考えられます。

辞退が起きる主な理由とその裏側

同調査では、「面接後に辞退した理由」として、次の結果が示されています(複数回答)。

求人情報と話が違った 49%
他社の選考が通過した 35%
雰囲気が悪かった 28%
面接官の態度が悪かった 28%
ネットで良くない口コミを見た 13%

「条件」よりも、「雰囲気」「態度」といった人の印象や感情に関わる項目が3割近くを占めている点は注目です。

これは、辞退の背景に“待遇差”ではなく“心理的要因”が存在する可能性を示しています。

面接中、候補者は会社の代表である面接官を通じて「この組織の文化」や「自分が馴染めるかどうか」を直感的に感じ取ります。

たとえ言葉で「風通しが良い職場です」と説明しても、面接官が終始そっけなかったり、表情が硬かったりすれば、候補者の中で「実際は違うのかもしれない」と不信感が芽生えます。

つまり、辞退の一因は“言葉ではなく空気”にあると言えるでしょう。

辞退を招く「空気」の正体:非言語メッセージの重要性

候補者がわずか1時間程度の面接で「雰囲気が悪い」「態度が悪い」と感じるのは、面接官から発せられる非言語コミュニケーション(ノンバーバル・メッセージ)が原因な場合もあります。

面接官が無意識に発している非言語メッセージは、候補者に以下のようなネガティブな印象を与え、不安を増幅させます。

・腕を組んでいる、体がのけぞっている
→「あなたに興味がない」「壁を作っている」

・笑顔が少ない、視線が合わない
→「歓迎されていない」「冷たい会社だ」

・パソコンを操作しながら話す
→「真剣に向き合ってくれていない」「雑に扱われている」

辞退を防ぐためには、意識的に笑顔や相槌を増やし、全身で「あなたを歓迎しています」というメッセージを伝えることが不可欠です。

「惹きつけ」は営業でもスキルでもなく、“安心感”の設計

辞退を防ぐための最初の一歩は、面接を「評価の場」ではなく「相互理解の場」と捉えることです。

応募者は評価される緊張状態にありながらも、「この人たちと働くイメージ」を探っています。

そこに少しでも“安心感”が生まれれば、辞退リスクは下がります

具体的には、次のような小さなコミュニケーションが鍵になります。

・応募者の話を最後まで聞き、要約して返す(傾聴)
・「それは大事な視点ですね」と感情に共感を示す
・面接中に笑顔やうなずきを意識的に入れる

こうした積み重ねが、応募者に「この会社は自分をちゃんと見てくれている」という印象を与えます。

それは“惹きつけ”というよりも、“信頼の構築”です。

信頼を構築するための面接フェーズ別ステップ

「安心感」は、いきなり生まれるものではありません。

面接の段階ごとに適切な対応を取ることで、信頼は積み重なります。

フェーズ目的心がける「空気づくり」
面接冒頭(5〜10分)緊張を解き、安全な場を作る雑談で共通点を見つけ、「私たちは敵ではない」と伝える。「遠くまで来ていただきありがとうございます」とねぎらいの言葉を必ず伝える。
深掘り(本題)評価と相互理解を両立させる評価だけでなく、応募者の「仕事に対する価値観」「将来やりたいこと」を引き出す質問を混ぜ、対話の姿勢を見せる。
質疑応答・逆質問企業への信頼度を高める質問に包み隠さず、正直に回答する。「ネガティブ情報も隠さない」姿勢が信頼につながる。

このステップを踏むことで、候補者は「この会社は正直で、私を尊重してくれる」と感じ、次のフェーズで発する「一言」がより心に響くようになります。

辞退防止につながる「一言」とは

では、面接の中で人事担当が発する“ひとこと”にはどんな意味があるのでしょうか。
それは単なる褒め言葉ではなく、応募者が未来を具体的に想像できるようにする言葉です。

たとえば、

「〇〇さんが入社されたら、きっと××の場面で力を発揮してくれそうですね。」

この一言には、「あなたをイメージしている」「期待している」というメッセージが込められています。

人は、自分が“必要とされている”と感じることで、安心し、関係性を築きたくなります。

面接官が未来の姿を言語化してくれることで、応募者は自然と「ここで働く自分」を想像し始めるのです。

他にも、状況に応じてこんなバリエーションが考えられます。

・「〇〇の経験を持つ方に来ていただけたら、チームの幅が広がりそうです。」
・「お話を聞いていて、当社の××プロジェクトにマッチしそうだと感じました。」
・「私たちも〇〇さんのような方と一緒に働けたら心強いですね。」

これらは誇張ではなく、“誠実な期待”として伝えることが大切です。

採用の現場では「惹きつけトーク」という言葉が使われることもありますが、実際に辞退を防ぐのは、“口説き”ではなく“共感”の一言です。

内定承諾の角度を高める「最後の一押し」の言葉

辞退防止の最終的なハードルは、内定を出す前後です。

内定承諾の角度を高めるために、面接官が最後に発すべき「安心感」を与える一言を加えましょう。

選考終了時:
「本日はありがとうございました。〇〇さんの〇〇に対する熱意(具体的な点)を強く感じることができました。結果は〇日までに必ずご連絡いたします。」
(誠実さと具体性で安心感を確保)

内定出し後:
「内定承諾期限までじっくり悩んでいただいて結構です。もし他社さんとの比較で迷っている点があれば、すべて正直に私たちにぶつけてください。疑問や不安を解消することが、お互いにとって大切だと考えています。」
(心理的安全性の提供)

最後の瞬間まで「不安解消に真摯に向き合う」姿勢を見せることで、候補者は「この会社は入社後も自分を大切にしてくれるだろう」という確信を抱くことができます。

まとめ:人を口説くのではなく、“未来を一緒に描く”

辞退を防ぐ魔法の言葉は存在しません。

しかし、面接の場で「あなたがここで活躍する姿を想像しています」と伝えることで、候補者は“選ばれる”立場から“共に選び合う”関係に変わります。

採用は条件交渉ではなく、未来の共創です。

人事担当者の一言が、候補者の心に「この会社と一緒に働きたい」という安心感を残せるなら、それこそが辞退防止の最も確かな一歩になるでしょう。

参考資料:
エン株式会社『8000人に聞いた「選考辞退」の実態調査ー『エン転職』ユーザーアンケートー』(2023年)
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2023/33829.html

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