仕事が楽しくないときに見直す“期待値”と“役割”の整理法

キャリア論

働いていると、ふと「最近、仕事が楽しくないな」と感じる瞬間があります。

やる気が出ない。成果が出ているはずなのに、評価されている感覚がない。任される仕事がしっくりこない…

実はその多くは、スキル不足や努力不足ではなく、期待値と役割のギャップに原因があります。

仕事は「何を期待されているか」「自分がどこを担当するのか」がハマったときに、自然と楽しくなりやすいものです。

今回は、そんな“ズレ”を整理して、気持ちとパフォーマンスの両方を軽くする方法を紹介します。

なぜ期待値のズレはストレスになるのか

期待値とは何か

仕事における期待値とは、次の3つの要素から成り立っています。

この3つが揃わないと、ストレスの原因になりがちです。

① 会社・上司があなたに期待していること
例)「今期は顧客対応の品質改善をリードしてほしい」「新規事業の立ち上げにコミットしてほしい」

② 自分が自分自身に期待していること
例)「もっと企画領域で価値を出したい」「定時で帰れる働き方にしたい」「次の昇進は絶対達成したい」

③ 周囲(同僚や顧客)が暗黙的に期待していること
例)「あの人に頼めば、急な依頼でも断らずになんとかしてくれる」「あの人はいつも雑用を率先してやってくれる」

これらが明確に言語化されることはあまり多くありません。

だからこそ、誤解が生じやすく、ズレたまま働き続けることでストレスが蓄積していきます。

ズレが生む典型的なストレス

「思っていた業務内容と実際が違う」
「成果を出しているのに、上司の反応が薄い」
「他の人がやるべき仕事(暗黙の期待)まで背負い込んで疲弊している」
「目標がわかりづらく、達成しているのかどうか不明」

人事視点で言えば、期待値は“説明したつもり”で放置されがちな領域です。

その溝に、メンバーが苦しむことは珍しくありません。

 “役割”が曖昧だと成果が出しにくい理由

役割とは「自分が担うべき範囲」の定義

本来、役割とはJob Description(職務記述書)で明確にされるものですが、日本企業では明文化されていないケースが多くあります

特にベンチャーや中小企業では、「状況に応じて柔軟に対応する」ことが求められ、役割が曖昧になりやすい傾向にあります。

役割が曖昧だと起こる問題

・優先順位をつけにくくなる
・自分の仕事が常に“後手”に回る
・「余計な仕事ばかりさせられている」感覚になる
・結果として成果が出づらく、モチベーションも下がる

人は「自分の役割の範囲」が見えているほど、安心して力を発揮できます

役割が曖昧だと、“どこまでやればいいか”が不明なまま進み、楽しさを感じにくくなります。

モヤモヤの正体を突き止める! 自分を苦しめる期待値と役割のギャップ診断

モヤモヤしているときは、一度、紙やメモアプリを使って“セルフ棚卸し”をしてみるのがおすすめです。

ここでは、そのギャップの診断方法をステップ毎にご紹介します。

STEP① 会社・上司からの期待値を書き出す

・今期の目標
・上司から繰り返し言われていること
・過去の評価コメント

書き出してみて曖昧な部分が多いなら、それは期待値が不透明なサインです。

▼上司に確認するときの質問例
・「今期、私に特に期待している成果はどこですか?」
・「判断が迷ったとき、どの基準で優先順位をつけると良いでしょうか?」
・「成果が出ているかどうか、どの指標(KPI)で判断すれば良いですか?」

これだけで期待値の見える化が進みます。

STEP② 自分自身の期待値を言語化する

意外と見落としがちなのが「自分自身の期待」です。

“なんとなく不満”の正体は、この自己期待が言語化されていないことによる場合もあります。

・どんな働き方(時間、場所、スタイル)が理想?
・どのスキルを伸ばしたい?
・どんな未来につながる仕事がしたい?

“なんとなく不満”の正体は、この自己期待が言語化されていないことによる場合もあります。

STEP③ 実際に担っている役割を書き出す

普段の業務を細かく書き出し、次の3つに分類してみましょう。特に🟡オーバーワーク🔴グレーゾーンの業務量を把握することが重要です。

分類業務の性質意味合い
🟢 コアな役割会社から正式に期待され、評価に直結する業務本来注力すべき仕事
🟡 オーバーワーク周囲から頼まれ、本来の役割ではないが「仕方なく」やっている業務引き受ける範囲の調整が必要
🔴 グレーゾーン誰の仕事か曖昧で、自分が「誰もやらないから」と拾っている業務責任範囲の明確化が必要

STEP④ ギャップを見つける

ここまで書き出すと、次のようなギャップが浮かび上がってきます。

・「期待されているのにやっていないこと」
・「期待されていないのにやってしまっていること」
・「役割に含まれていないのに負担になっている仕事」

ギャップが大きいほど、仕事は楽しく感じにくくなります。

ギャップを埋めるための具体的な対処法

自分のギャップが見えてきたら、実際にそのギャップを埋める方法を試してみましょう。

対処法① 期待値を上司とすり合わせする

ギャップは、一度の対話だけでも大きく改善することがあります。

▼すり合わせで確認すべきポイント

・成果物(何をつくるのか): 報告書なのか、システムなのか、顧客満足度の上昇なのか
・期限(いつまでに): マイルストーンと最終期限
・判断基準(何をもって“良い”とするか): 品質基準や合格ライン

この3点がクリアになれば、期待値はほぼ整います。

この対話は、上司が動くのを待つのではなく、自分から働きかけることが重要です。

対処法② 役割をクリアにする—「My職務記述書」を作る

役割が曖昧なら、自分で「マイ職務説明書(Job Description)」を作成し、上司に確認を取るのが有効です。

・主要業務
・副次的な業務
・担当しない業務
・目標・責任範囲

これをまとめた上で上司と確認すれば、役割の“曖昧ゾーン”が大幅に減ります

対処法③ 期待値を調整する

期待は“与えられるもの”ではなく、“調整できるもの”です。

期待が高すぎる場合

・リソース不足(時間、人員)をデータと共に説明する
・優先順位を相談する。「AとBがあるが、今期は会社期待が高いAに注力したい。Bは来期にしたい」など。
・「この範囲までならコミットできます」と線引きを示す

期待が低すぎる場合

・週報や月報で達成指標と貢献度を明確に記載するなど、成果を見える化する
・新しい役割や改善提案を積極的に行う
・小さな成功体験を積み重ね、役割拡大につなげる

期待値は固定されたものではなく、コミュニケーションによって変えられるものです。

その視点があるだけで、仕事がだいぶ軽くなります。

“楽しく働く”を取り戻すためにできること

役割がハマると仕事は自然と楽しくなる

人は、自分の強みを活かせる環境でこそパフォーマンスが上がり、楽しさも生まれます

役割の整理は、自分の強みがどこにあるのかを再確認するきっかけにもなります。

期待値が合っていると評価も安定する

期待と成果物が一致すれば、評価の認識も合いやすくなります。

「頑張っているのに伝わらない」というストレスも減り、心理的な負担が軽くなります

転職を検討すべきタイミング

期待値・役割調整を試みても改善しないケースもあります。

・上司が一切すり合わせに応じない、または約束を破り続ける
・組織文化的に、役割が常に曖昧で変わり続け、改善の余地がない
・自分の価値観と合わない方向へ期待が設定されている
・期待が高すぎて心身への負荷が限界

こうした場合は、転職や環境の見直しも大切な選択肢です。

まとめ:期待値と役割の整理は“心の負担”を軽くする

仕事が楽しくないとき、原因を「自分の努力不足」と感じている人は多いかもしれません。

しかしその多くは、構造的な「期待値と役割のズレ」によって生まれています。

期待値を整理し、役割をクリアにすれば、
仕事の見え方が変わり、心の負担も軽くなります。

歩き方を整えれば、キャリアはもっと軽やかになる。

そんな一歩として、今回の整理法が役に立てば幸いです。

上司とのすり合わせを試みても、どうにも変わらないと感じた方へ

もし「とはいえ自分の場合、どう期待値と役割を整理すればいいのだろう…」と迷うことがあれば、キャリアの専門家に相談するのも一つの方法です。  

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