ようやく内定承諾をもらい、採用担当者としてひと安心。
しかし数週間後、「大変申し訳ありませんが、内定を辞退させていただきます」という連絡が届き、採用計画を見直さなければならなくなった。
このような経験をしたことがある採用担当者は少なくないでしょう。
近年は転職市場が活発化し、候補者が複数の企業から内定を得ることも珍しくありません。そのため、内定承諾を得たからといって、必ず入社につながるとは限らない状況が生じています。
一方で、内定承諾後は採用活動が一区切りとなるため、企業側の連絡が減ってしまうケースも少なくありません。
しかし、候補者にとってこの期間は、退職交渉や家族との相談、新しい環境への期待と不安が入り混じる時期です。企業との接点が少なくなるほど、不安が大きくなり、他社へ気持ちが傾いてしまう可能性もあります。
だからこそ重要になるのが、入社前コミュニケーションです。
本記事では、内定承諾後から入社日までの期間に企業が意識したいコミュニケーションの考え方と、明日から実践できる具体的な取り組みをご紹介します。
なぜ内定承諾後に辞退が発生するのか?主な原因

「内定を承諾したのだから、入社の意思は固まっているはず」と考えてしまいがちですが、実際には承諾後に辞退へ至るケースは少なくありません。
もちろん、他社からより良い条件のオファーを受けたという理由もあります。しかし、それだけが辞退の理由ではありません。
例えば、次のような状況が考えられます。
・現職から強く引き止められた
・家族やパートナーと相談した結果、転職を見送ることになった
・入社まで時間が空き、転職への気持ちが薄れてしまった
・新しい職場で本当にやっていけるのか不安になった
・企業との連絡がほとんどなく、「本当に歓迎されているのだろうか」と感じた
このように、多くの辞退は企業に対する不満だけが原因ではありません。
むしろ、時間の経過とともに不安が大きくなり、それを解消できないまま意思決定を変えてしまうケースが見られます。
採用担当者は、内定承諾後も候補者の状態や意識が変化することを前提に捉え、入社日まで適切なコミュニケーションを維持することが重要です。
入社前コミュニケーション(内定者フォロー)の目的は「説得」ではない

内定承諾後のフォローというと、「辞退されないように連絡を続けること」と考えられることがあります。
しかし、この考え方には注意が必要です。
頻繁に電話やメールを送ったり、「入社を楽しみにしています」と何度も伝えたりするだけでは、かえって内定者にプレッシャーを与えてしまう場合があります。
入社前コミュニケーションの目的は、候補者を説得することではなく、安心して入社日を迎えられる状態をつくることです。
意識すべき要素は以下の3点です。
- 不安の解消:手続きや人間関係に関する疑問や懸念を早期にクリアにする
- 期待感の維持:定期的な情報提供により、入社後の働くイメージを明確にする
- 信頼関係の構築:誠実な対応を重ね、相談しやすい関係性を構築する
これらの取り組みは辞退防止にとどまらず、入社後の早期適応(オンボーディング)をスムーズに進め、早期離職を防ぐための基盤にもなります。
【5選】内定辞退を防ぐ入社前コミュニケーションのポイント・具体例

入社前コミュニケーションは、特別な制度を新たに導入しなくても始められます。
重要なのは、内定者が必要としているタイミングで適切な情報を届け、不安を一つずつ解消していくことです。
ここでは、多くの企業で取り入れやすい5つの取り組みをご紹介します。
方法① 内定承諾後はできるだけ早く歓迎のメッセージを伝える
内定承諾の連絡を受けたら、できるだけ早いタイミングで歓迎の気持ちを伝えましょう。
このときに大切なのは、事務的な返信だけで終わらせないことです。
例えば、
「改めて、内定承諾ありがとうございます。○○さんと一緒に働けることを、社員一同楽しみにしています。」
といった一文を添えるだけでも、受け取る印象は大きく変わります。
また、直属の上司や配属予定部署の責任者から短いメッセージをもらえれば、さらに歓迎されている実感を持ってもらいやすくなります。
長文である必要はありません。
「一緒に働くことを楽しみにしている」という気持ちが伝わることが重要です。
方法② 入社までの流れを分かりやすく共有する
内定者が感じやすい不安の一つが、「この後、何をすればいいのだろう」という疑問です。
企業側にとっては当たり前の手続きでも、転職経験が少ない方にとっては分からないことが多くあります。
例えば、次のような内容を整理して伝えると安心感につながります。
・提出書類と提出期限
・健康診断の案内
・入社日までのおおまかなスケジュール
・初日の集合時間や持ち物
・配属部署や担当業務の概要
特に、入社日まで数か月空く場合は、「次は○月頃にご連絡します」と伝えておくだけでも、内定者は安心できます。
「連絡が来ない」という状態をつくらないことが大切です。
方法③ 定期的に近況を確認する
入社前の連絡は、手続きの案内だけではありません。
退職交渉や引き継ぎが思うように進まず、不安を抱えている人も少なくありません。
そのため、定期的に近況を確認する機会を設けることも有効です。
例えば、
「退職手続きは順調に進んでいますか。」
「入社に向けて気になることはありませんか。」
といった連絡だけでも十分です。
ここで注意したいのは、返信を急かしたり、頻繁に連絡したりしないことです。
月に1回程度でも、「気にかけてもらえている」と感じてもらえることがあります。
また、質問しやすい雰囲気をつくることで、小さな不安を早い段階で解消しやすくなります。
方法④ 現場社員と話す機会を設ける

採用担当者とのやり取りだけでは、実際に働くイメージを持ちにくいことがあります。
そのため、入社前に現場社員と交流する機会を設けることも効果的です。
例えば、
・配属予定部署の社員とのオンライン面談
・少人数でのランチ会
・オフィス見学
・社内イベントへの参加
など、形式は問いません。
この場で重要なのは、会社説明をすることではなく、自然な会話ができる時間をつくることです。
現場社員から仕事内容や一日の流れ、職場の雰囲気などを直接聞くことで、入社後のイメージが具体的になります。
また、「この人たちと一緒に働くのが楽しみ」と感じてもらえれば、入社への期待も高まりやすくなります。
方法⑤ 入社後のイメージを具体的に共有する
入社前の不安は、「何をするのか分からない」という状態から生まれることが少なくありません。
そのため、入社後の流れをできるだけ具体的に伝えておくことも大切です。
例えば、
・入社初日に行うこと
・最初の1か月で担当する業務
・3か月後に期待している役割
・研修やフォロー体制
などを共有します。
もちろん、実際の業務は状況によって変わる可能性があります。
そのため、「現時点ではこのような流れを予定しています」と前置きしたうえで説明するとよいでしょう。
入社後の姿を具体的にイメージできるようになることで、不安は軽減され、「新しい環境で頑張ってみよう」という前向きな気持ちにつながります。
注意!内定者フォローでやってはいけない4つのNG行動

入社前コミュニケーションは重要ですが、「連絡を増やせば良い」というものではありません。
良かれと思って行った対応が、かえって内定者の負担になってしまうこともあります。
ここでは、避けたい代表的な例をご紹介します。
NG① 手続きの連絡しか送らない
提出書類や入社日の案内だけでは、企業とのやり取りが事務的になってしまいます。
もちろん、必要な手続きを案内することは大切です。しかし、それだけでは「歓迎されている」という実感を持ちにくくなります。
手続きの連絡に加えて、一言でも歓迎のメッセージや近況を気遣う言葉を添えるだけで、受ける印象は大きく変わります。
NG② 連絡がまったくない
内定承諾から入社日まで数か月空く場合でも、一度も連絡を取らないことは避けたいところです。
企業側は「特に連絡事項がないだけ」と考えていても、内定者は
「本当に入社準備は進んでいるのだろうか。」
「配属は変わっていないだろうか。」
と不安を感じることがあります。
長期間連絡がない状態をつくらず、節目ごとにコミュニケーションを取ることを意識しましょう。
NG③ 頻繁に連絡しすぎる
反対に、毎週のように電話やメールを送ることも注意が必要です。
内定者は現職で働きながら退職準備や引き継ぎを進めていることが多く、想像以上に忙しい時期を過ごしています。
企業側としては親切心からの連絡であっても、「返信しなければならない」という負担を与えてしまう可能性があります。
適度な頻度で連絡し、返信を急がせない姿勢も大切です。
NG④ 入社を前提としたプレッシャーをかける
「辞退しませんよね。」
「入社日を楽しみにしています。」
こうした言葉を何度も繰り返すと、内定者によってはプレッシャーに感じることがあります。
歓迎の気持ちを伝えることは大切ですが、意思決定を急がせたり、心理的な負担を与えたりするような伝え方には注意が必要です。
入社前コミュニケーションは、内定者を管理するためではなく、安心して入社日を迎えてもらうための取り組みであることを忘れないようにしましょう。
まとめ:入社前コミュニケーションは「早期定着・活躍」の第一歩

内定承諾は採用プロセスの終了ではなく、新しい社員を迎えるためのスタートラインです。
企業に求められるのは、強引な引き留めではなく、相手の状況に配慮しながら必要なタイミングで必要な情報を届け、困ったことがあれば相談できる関係をつくり、不安を取り除くことです。
適切な入社前コミュニケーションは、内定辞退の防止にとどまらず、入社後の早期定着やエンゲージメント向上に寄与します。
入社日を迎え、その人が安心して新しい職場でスタートできるところまでを採用プロセスと考えることで、企業と候補者の双方にとって、より良い採用につなげていきましょう。
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